第1回目講演会「頭痛外来」 講演内容

頭痛の原因

頭痛にはいろんな原因があります。

頭は、皮膚・筋肉と筋膜・頭蓋骨・脳を包んでいる三層の膜・脳実質で構成されています。そのいずれかの病気で頭が痛くなります。激烈な頭痛は、脳を包んでいる膜や皮膚の血管の病変で起こります。

頭痛の種類

命に係わるような頭痛(画像診断で診断がつくもの)例えばくも膜下出血のような頭痛を二次性頭痛、画像診断でわからない肩こりや片頭痛などは一次性頭痛といいます。

一次性頭痛が圧倒的に多く、日本人で、肩こりの方は2000万人くらい、片頭痛は女性に多く人口の8%で800万人ほど、群発性頭痛は数万人程度です。

これに対して命に係わる二次性頭痛の場合、代表的なものとしてくも膜下出血や脳腫瘍がありますが、一年に3万人ほどが発病します。

じわじわおこるときには肩こりや脳腫瘍・慢性硬膜下血種が代表的です。

片頭痛の時には前触れが起こることがあり、視野にギザギザのある光が見えたり匂いや音に敏感なことがあります。

一次性頭痛の場合には、特にくも膜下出血では手術を急がねばなりませんし、脳腫瘍・脳出血・慢性硬膜下出血も早く治療が必要です。

片頭痛の症状と対策

一次性頭痛の場合には、命にかかわらないのですが、片頭痛や群発頭痛では激痛で生活や仕事に大きな影響が出ますので、医療機関での診断と治療が必要です。

近年、片頭痛治療は大変進歩しました。20世紀には片頭痛治療薬は麦角アルカロイド(エルゴタミン)が主役でした。21世初頭にイミグランをはじめとするトリプタン系の薬剤が開発され、前兆の時に飲んで効くという画期的な治療法です。しかし、この薬でも半分程度の方には十分ご満足いただけない治療効果でした。

2021年にCGRP阻害薬が発売され、90%以上の方にご満足いただける治療効果が得られています。

片頭痛の誘発因子ですが、生理・低気圧・精神的ストレス・不眠過労・アルコール(ワイン)・特定の食べ物(カカオ)・自分に嫌な臭いなどがあります。片頭痛が起こると、頭の片側が脈打つようにずきんずきんと痛くなり、嘔吐もおこり、仕事や学業、家事全般に支障が出てきます。週に一回寝込むようですと一年のうち2か月近くを、5年であれば一年近くを頭痛で寝込んでしまうことになり社会生活上大変な支障があることになります。100%治す根治するということはできませんが、現在では治療の選択肢が広がり、予防薬と急性期治療薬のすみわけが整理できています。予防薬としては抗てんかん薬であるバルプロ酸ナトリウム(デパケン)、そのほか不整脈や高血圧の薬、精神安定剤や漢方薬があげられます。前述したCGRP阻害薬は一番有効な予防治療です。デパケンはかなり有効性の高い薬ですが、胎児に脊椎破裂を起こすことがあり、挙児を希望される女性には処方することはできません。

急性期治療薬はイミグランなどのトリプタン系が主体で、鎮痛薬NSAIDsも効果があります。2022年にはジタン系の内服薬も上市され効果が期待されます。

群発性頭痛には発作時に酸素吸入を併用すると楽になります。

鎮痛剤やトリプタン系の薬剤を早めに頻回に使いすぎますと、薬剤が効かなくなることがあり、これを薬剤乱用性頭痛といいます。片頭痛はエストロジェンの減少する更年期には楽になってくることが多いですが、完治しない人が多く、かかりつけの先生との協働治療が長く続くことをご理解ください。

ストレッチや運動は筋緊張性頭痛(かたこり)に有効です。純粋な片頭痛の場合には運動療法は効果がありません。片頭痛と肩こりが合併している混合性に頭痛の方も多くおられますので、ストレッチ運動ですっきりしないときには医療機関を受診してご自分に合った薬を選択してください。

もちろん頭痛の原因を一回はきちんと調べる必要があります。未破裂脳動脈瘤がないかどうか、血管狭窄がないかどうかなど、MRI検査を一度受けてください。