睡眠編(第四回) Dr.藤田の健康コラム

 睡眠時無呼吸症候群(SAS)に合併する病気は数多くあり、SASから引き起こされる健康被害は甚大だと理解してください。

 閉塞型の睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、低酸素状態になりそのあと再度の酸素化を繰り返す病気です。低酸素の時に気道が閉塞しており頑張って呼吸しようとしてもできず、努力性呼吸で胸腔内圧が激しく陰圧になり、頻回の覚醒反応により睡眠が分断されます。したがって不眠・咳・血圧上昇・頭痛・頻尿・逆流性食道炎・不整脈(心房細動)・脂質代謝異常・インスリン抵抗性(糖尿病)・心不全・狭心症・脳血管障害などの多くの専門科の領域にまたがった症状を表します。もちろん治療として歯科・耳鼻科にも関連します。

 高血圧はかなり多く、特に若い方で早朝に高血圧になる、中年以降の方で降圧剤を飲んでもなかなか下がらないということもあります。SASのない方は一般的に睡眠時には血圧が下がるのですが、SASになると血圧が下がらないないし睡眠時にかえって血圧が上がるということが起こります。休んでいても血圧が上がり動脈硬化が進む、そのために心筋梗塞や脳卒中が誘発されやすいことになります。

 不整脈も多いです。無呼吸になると呼吸努力が必要になります。寝ているのに一生懸命呼吸をしていて呼吸筋は休むことができませんし、胸腔内の圧変動で心臓に負荷が加わり心房細動が起こりやすくなります。そのために朝方に脳塞栓型の脳卒中が起こりやすく虚血性心疾患も同様です。心臓にかかる負荷は心不全を誘発します。

 夜に足がむくんでいる方はかなりおられると思います。でも朝になると足がすっきりしていませんか?夜に横になって足と心臓の高さが同じになり、寝床に入ると足の水分が上半身に移動し始めます。上半身に移動した水分は肺や心臓など上半身の内臓と、喉元の静脈などに移動していきます。

上半身に移動した水分は喉や気道などの粘膜に貯留していきます。もともと狭い気道は夜になるとさらに狭くなっていきます。心不全傾向のある方は夜に呼吸困難症状を起こしやすくなっています。夜はOSASも悪くなるしCSASも悪くなってしまいます。座りっぱなしだと筋肉が血流を心臓に戻す筋肉ポンプが働かなくなります。座っていても足をゆすったり踵落としなどの運動をお勧めします。心臓が悪くなくても塩分の摂りすぎの方は浮腫みが強くなりますので、夜間に心臓や呼吸への負荷がかかります。

 閉塞性肺疾患や喘息に伴うSASは呼吸器科の先生へ受診が必要です。咳の強い方や逆流性食道炎が治療を行ってもなかなか治らない方にSAS合併が多いことも知られています。認知症の遠因になるであろうことも大体わかってきました。不眠の方が複数の睡眠薬を服用されると、SASが誘発されることもあります。糖尿病・慢性腎臓病・高脂血症との関連もあります。SASは万病のもとです。