片頭痛編(第三回) Dr.藤田の健康コラム
小児期から思春期の片頭痛はかなり多い症状です。小学生では男女差はありません。二次性徴(思春期)が始まると女子が圧倒的に多くなります。

まず学童期の片頭痛から記載します。小児片頭痛は片側ではなく両側のずきんずきんとする痛みが多く、それも前頭部の方が痛い傾向があります。男女差はありません。予兆で、あくびや集中力低下肩こりが起こることがあります。そのあと前兆で視野が光ったり視野欠損・手足のちくちく感・はなしにくいなどの症状が先行することがあります。運動すると頭痛が強くなるという訴えも多いです。小児では自家中毒に関連する頭痛(周期性嘔吐症)や、立ち眩み低血圧に関連する頭痛(起立調節障害)、発作的に起こるてんかん性頭痛、めまいや副鼻腔炎を伴う場合、発達障害や外出困難、痛みがなくても登校困難な場合には小児科などをはじめとする専門科目への受診が必要です。それと15歳までは一番効果のある予防薬である抗CGRP関連薬の注射は安全性が確認されておらず使うことができません。
思春期以後の片頭痛について記載します。思春期になると女性の片頭痛が激増します。女性ホルモンのエストロジェンが周期的に下がる時期の排卵期と月経期に片頭痛の起こる方が増えてきます。エストロジェンの急減する時期に脳内のセロトニンの変動や血管拡張を起こしてしまうからです。男性は女性ホルモンが少ないのと生理的変動がないので、片頭痛の方は女性の1/4程度です。妊娠するとエストロジェンは安定しますので片頭痛は激減します。授乳しているときまでは頭痛はあまりおきませんが、月経が戻った後は育児ストレスも加わり出産前よりもつらくなる方が多いです。そこで予防薬を再開して、生活障害を起こさないように心がけましょう。また誘因として多いのは低気圧などの気候変動です。スマートフォンアプリで天気予報で特に低気圧と片頭痛の予測ができますので、お天気と関連がある方はご利用をお勧めします(フリーソフトもあります)。更年期になりますと女性ホルモンの分泌が一時過剰になりこの時期に頭痛発作が頻発することがあります。薬物治療でなだめることは大体可能です。この時期を過ぎますと片頭痛が減る方がほとんどです。中には耳鳴りやめまいも伴って生涯にわたり頭痛の続く方がおられます。当クリニックで予防注射をされている方の最高齢は70代です。注射ですっかり楽になり、「今までの人生は何だったのだろうか」という、ご感想を述べられておりました。妊娠の時授乳の時にどのように投薬すべきかについては様々な経験が積み上げられてきました。予防注射は一番効果がありますが100%とはいいがたいこと、それを補う経口薬が開発中であること、トリプタンの血管収縮という弱点を補う内服薬が発売されたこと、どんどん医学は発展してきました。次回は一番症例数の多い緊張型頭痛について述べます。
