認知症編(第十一回) Dr.藤田の健康コラム 

 今日は認知症治療についてですが、最初に予防について簡略に述べます。一次・二次・三次予防の3つがあります。予防も治療と考えています。一次予防は認知症にならないようにする対策です。二次予防は軽度の認知機能低下(認知症にまだなっていない状態)の方の症状が進まないように、三次予防は認知症の方の症状が進まないように自宅でなるべく長く生活できるようにケアを中心として予防をしていきます。一次から三次まで共通して食事や運動などライフスタイルの見直しや改善を提案しています。日本で一番有名で予防を大規模に行っているのが認知症予防学会会長の浦上先生が提唱した「鳥取方式」です。マンパワーが必要ですがお勧めです。 

三次予防の場合ご本人に認知機能が落ちているという認識が薄い事が多く、車の運転は免許返納を勧めつつ、通院を中断されないように励ましていくという配慮も必要と考えています。

予防についてはかなり丁寧な説明が必要ですので、後日別稿で説明させていただきます。

では治療についてです、ざっくり言えば、薬を使わない治療と薬の治療の二つがあります。まず誰でもできるのが薬を使わない非薬物療法です。適切な柔和な笑顔とゆったりとした語りで接し、焦らせない急がせない否定しない、安心安全な人間関係を結ぶことです。東北大学の川島先生が提唱した脳活、公文の学習療法も効果がありますが、適切な難易度でないと続きません。運動療法はどのステージでも効果があります。回想法も素晴らしい治療です。子供のころからの思い出を語り合うことで、脳が活性化します。美幌でいえば夏祭りがサンバがとか、津別は盆ダンスとか、大空はゴッホの墓とか、網走は流氷来なくてはらはらとか、いろいろありますね。趣味も大事です。その延長線で園芸療法・音楽を主とした芸術療法・アロマテラピー・動物療法などさまざまあります。趣味を捨てないでと毎日話している藤田は、三年ぶりにトルコ桔梗の種植えをして今のところ順調です。指導いただきました美幌町母ちゃんの朝市の皆さま方に感謝申し上げます。趣味に意欲がなく興味がなくなったときに認知症は発病していると判断してよいと思います。ないしうつ病かもしれません。

 薬物療法は効果のある方と、あまり効果がない方がおりますので、賛否両論があると思います。開発の歴史ですがエーザイの杉本八郎さんが上司の忠告に背き研究してくれたおかげで「アリセプト」が生まれました。極論でいえば農薬の延長線の薬です。次いでガランタミンそしてリバスチグミンテープ(食欲亢進作用あり)の二剤が東日本の大震災の年に発売、同年メマンチン(脳の興奮を抑えて神経雑音を減らす)も出て三剤が加わりました。海藻の興奮性アミノ酸を実験してきた私にとってメマンチンは驚きと感動でした。近年アミロイドベータに対する疾患修飾薬が発売されました。説明がむつかしいので別稿します。