認知症編(第十三回) Dr.藤田の健康コラム
今回は、認知症解説の今春最後の話題として、最近の「アルツハイマー型認知症の新薬(疾患修飾薬といいます)」に関しまして、説明します。
まずこれまでのお薬です。二系統の薬がありますが、どちらも根本的な根治薬ではありません。しかし認知機能を改善するため、長い目で見れば使った方が良いと思います。使い分けが必要ですが、抗うつ的効果や、片や興奮を抑える効果がありますので、認知症治療の基本的治療薬として大事なものと考えています。ただしあまりにも高度認知症になった場合には、メリットがなければ使用をやめるという選択肢も出てきます。従来薬の一つ目は認知症の方で減っているアセチルコリンを増やす薬です、この薬はまずドネペジル(アリセプト)という薬が日本のメーカーであるエーザイから発売され、次いでガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(リバスタッチパッチ)と続きました。二つ目はグルタミン酸の過剰興奮を抑える薬で、メマンチン(メマリー)があります。

そこに2023年にレケンビ(レカネマブ)が、2024年にケサンラ(ドナネマブ)が発売されました。脳内にたまったアミロイドβという異常たんぱく質を除去するという効果はありますが、100%除去できるものではなく、病気が治るという画期的な効果は期待できません。また、適応が限られます。アルツハイマー型認知症のきわめて早期か、アミロイドβの沈着の証明される軽度の認知機能低下の状態の方のみです。そしてレケンビは二週間に一回の点滴を約一年半行うものです。副作用で、出血や脳浮腫が起こりうるため、脳梗塞やその他の脳疾患のある方々は適応になりませんし、症状がなくてもラクナ梗塞の多発している方や微小脳出血などのある方々は適応から外れることが多いです。つまり、生活習慣病をなるべく早めに治療する、多少血圧や糖尿などがあってもこじれたり合併症を起こさないようにしておきませんと、疾患修飾薬を使うと副作用が起こる可能性が懸念され、適応から外れかねません。前回お示ししましたように認知症予防の14か条を常日頃から心得て予防に努めることが、当面の目標と考えてください。それでも不幸なことに認知機能が低下した際にはなるべく早く医師の診断を受けて、疾患修飾薬の適応になるかどうか専門医の診断を受けるということで、ご理解いただければと思います。薬の値段が非常に高価なことと、初期導入施設が少ないことなど、疾患修飾薬の普及の現状には地域格差が確かにあります。当クリニックは施設基準の関係で、初期導入についてはできかねますが、ご相談をお聞きすることはできます。その他、精神科や脳神経外科医の勤務する病院などで相談はできるとおもいますので、お問い合わせください。
