認知症編(第十二回) Dr.藤田の健康コラム 

 再び認知症について述べます。今回は認知症予防についてです。2024年夏にLancet誌に報告されました。14項目からなります。以前の予防の論文に2項目が追加されました。それは高LDL血症(高脂血症)と、視力低下です。ひとつずつ見ていきます。

まず1つめは若年期の教育の不足です。2から11番目は中年期の因子です。2難聴、3高LDLコレステロール血症、4うつ病、5頭部外傷、6身体活動の欠如(運動不足)、7糖尿病、8喫煙、9高血圧、10肥満、11過度の飲酒です。12から14番目は高齢期の因子です、12社会的接触の欠如(孤立)、13大気汚染、14視力低下です。1の教育の不足は趣味やサークル活動・寿大学などで対策可能です。2難聴3高LDL血症4うつ病7糖尿病9高血圧14視力低下は医療機関で対応可能です、補聴器を恥ずかしがらないでください。8の喫煙は禁煙外来で対応できます。10の肥満は抗肥満薬の進歩はありますが、適応が厳しく、運動と食事制限が基本です。11のアルコール問題は精神科での断酒薬や節酒薬という選択肢もありますが、やはり個人の節制が求められます。13大気汚染の原因として、家庭内では電子タバコが挙げられますので、注意してください。5の頭部外傷はボクシングのパンチドランカーで証明されています。スポーツ外傷に注意してください。大問題は12の孤立です。例えば、今日行くところがある、今日会う人がいる、今日することがある。ほんのわずかでよいのです。散歩する会話する、ちょっとおしゃれ。お茶を飲む友人がいる。とても大事なことです。

 三大死因を避けられても、足腰が弱かったり、認知機能が落ちてしまったりして、そこで誰とも接触がない、生活の支援を頼まず孤立してしまう、そういう人生を選択すると長生きをしても楽しみも何もないということになりかねません。

 Lancet誌でまだ取り上げられていませんが、睡眠が大きな健康要素です。眠っている最中に、脚がむずむずして眠れない、悪夢をみて大声を出してしまう、朝方こむら返りを起こして目が覚める、いびきがひどく呼吸が頻繁に止まる、こういう状態になると、寝ている間に記憶の強化ができない・脳のごみ(アミロイドβ)を排泄できないがためにアルツハイマー型認知症になりやすくなります。睡眠に問題を抱えている方は早めの対処が必要です。オレキシン拮抗薬という体に優しい睡眠薬が今三種類使えるようになりました。睡眠医学の発展には目を見張るものがあります。

 結びに、生活習慣病を避ける、足腰を少しでも達者にする、ボケもそれなり年相応、そういう人生を生きて、きんさんやぎんさんのように笑顔で毎日生活したいものです。いつまでも一人で自分のことを何とかすることも大事ですが、いずれ困る前に保健医療、福祉介護を頼ってください。「いま・ここ・わたし」を一人だけで完結せずに、地域のつながりを大切にして、長生きを楽しみませんか。