脳の神経にまつわるお話(顔面神経麻痺) Dr.藤田の健康コラム

今回は、顔面神経麻痺について説明します。顔がゆがむ顔面神経麻痺はそれほど多い病気ではありませんが、ひどく顔がゆがんでしまうという外見の問題が大きいため、一度この症状の方を見ると記憶に残りやすいと思います。また、お読みになっている皆様の中で何名かの方はご不幸にもこの病気に罹患されたかもしれません。

顔面神経麻痺は通常、突発的に発病します。発熱や風邪症状が先行することがありますが、何も先行症状がないままに朝起きた時にどうも片側の顔面がおかしい、顔面のゆがみが数時間から一日でだんだん進み、麻痺した側の目をつぶれない、麻痺した側の唇をしめられない、末梢性の神経麻痺の場合、額のしわが寄らない、こういった症状が出てきます。

末梢性と申し上げましたが、顔面神経麻痺は脳卒中などで起こる中枢性顔面神経麻痺(一般的に麻痺は軽く額のしわが寄る)と、麻痺のかなり重いことの多くかつ片側の額のしわが寄らなくなる末梢性の顔面神経麻痺の二種類があります。原因として圧倒的に末梢性が多く、末梢性の大部分はウイルス性のベル麻痺(単純ヘルペスウイルつが原因のことが多い)、ハント症候群(水泡をつくる皮膚の病変を伴いひどい痛みも伴う、一言でいえば顔面神経の帯状疱疹です)と、外傷に伴う(側頭骨など頭蓋底骨折)末梢性顔面神経麻痺があります。

ベル症候群は人口10万人あたり年間約30人低緯度、ハント症候群は同じく3人程度の発病率です。数は少ないとは言っても顔面神経麻痺の最大の後遺症は角膜炎の併発による失明で、侮ってはいけないと思います。感染性の顔面神経麻痺は脳神経外科や耳鼻科などの診療科でも診断治療を受けることになります。もちろん眼科の先生の診療も必要です。

皮膚の単純ヘルペスや帯状疱疹であれば皮膚科の先生が診療してくださいます。顔面神経麻痺だけは、中枢性と末梢性の診断が必要なことと、MRIなどの画像診断が必須のことがあります。治療は、抗ウイルス剤やステロイド剤、角膜炎予防などの目薬です。ステロイドを用いますので糖尿病が悪化することがありますし、胃潰瘍を併発することもありますので、注意が必要です。麻痺を起こしている顔面筋肉を突っ張らせてはあとあと麻痺の戻りが悪くなりますので、セルフマッサージを続けることは重要です。決してあきらめず、ゆっくり継続してください。ステロイド剤はだらだら続けると副作用が大きいため、急ぎ減らして短期間で止める必要があります。

別件ですが、今年から帯状疱疹ワクチンが行われることとなりました。ハント症候群の予防のためにはとても素晴らしいことだと思います。日本の誇る世界的男性バイオリニストもこの病気で苦しみました。帯状疱疹と顔面神経麻痺は少ない組み合わせですが、子供のころにかかった水痘ウイルス(水疱瘡)は神経根に一生巣食っています。ワクチンが頼りです。ぜひ接種をお勧めします。